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昨今、子どもの健全育成という観点からみてあまりにも深刻な事態の報道が相次ぐことに、私たち関係者としては胸が痛む思いをしている。
家庭において本来は愛育されるべき子どもたちが、逆に放任され、あまつさえ親から虐待を受けた末に、児童養護施設に入所してくるといった事例が全国的に激増している。
これは特別な家庭に生ずる希少な事例ではなく、むしろ少子化社会における子育ての混乱現象の極みに位置する社会病理として捉えるべき問題かもしれない。
児童養護施設は上記のような理由により家庭において親や家族等と生活を共にすることが困難な子どもたちを、親や家族に代わって愛育し、自立の過程で必要な様々な支援を行う目的で設置され、運営されている。
しかるに、その児童養護施設において職員から子どもへの不適切なかかわりがなされているという報道記事に接することは、真に憂慮に堪えないところである。
私たち兵庫県下の児童養護施設で組織する兵庫県児童養護連絡協議会は、このような市民からの負託に反する行為・行動のない施設の確立を目指し、真摯な努力を積み重ねて今日に至っているものである。
従来、各施設はそれぞれの方針や判断に基づいた児童処遇を行ってきたのであるが、配布した文書中の理念に掲げるように、児童の権利条約の趣旨をよりいっそう尊重し、個々の子どもの権利保障の徹底を図るとともに、施設に入所している子どものみならず地域の子育てについても積極的にかかわりを深め、蓄積してきた子育てのノウハウを還元しることによって、子どもの健全育成に幅広く寄与したいとの願いを強く持つものである。
今回、こうした決意を県下14施設の児童養護施設の総意としてまとめ、兵庫県児童養護連絡協議会の運営規範として「今、こどもたちと」−子育て支援規準−を制定するものである。
【
目的 】
【 目的 】
兵庫県児童養護連絡協議会は、「児童の権利条約」を真に尊重し、施設で生活する子どもたちのあらゆる権利が擁護されていることを確認するために、施設処遇の共通規準たる「今、子どもたちと」を定める。
【方 法】
本規準は、兵庫県内の児童養護施設が兵庫県児童養護連絡協議会と別紙協定書に基づく協定を結ぶことによって当該施設において有効なものとなる。
なお、規準の運用ならびに発展を目的として、第三者を交えた「規準推進委員会」を設置する。
協定を締結したにもかかわらず規準が遵守されていないことが判明した場合には、一定の手続きを経た後、最終的に施設名の公表を行う。【情報収集】
本規準の遵守状況ならびに苦情の収集等を目的として、兵庫県児童養護連絡協議会はホームページを開設する。
【
私たちの子育ての理念 】
1 私たちは、子どもたちの権利を保障します。
- 子どもたちの心を正しく理解し、心を育む生活の場を整えます。
- いかなる暴力からも子どもたちを保護し、すべての子どもたちの権利を保障します。
2 私たちは、子どもたちの成長・発達を支援します。
- 一人一人の子どもの適正や能力が十分に伸びるように支援します。
- 基本的な生活習慣や道徳観を身につけ、年齢にふさわしい正義感や責任感を持つよう支援します。
- 集団生活における様々な年齢の友達や大人との交流を通じ、「育つ喜び、育ちあう楽しみ」 を経験できる環境づくりに取り組みます。
3 私たちは、子どもたちの自立を支援します。
- 子どもたちの発達年齢に応じた学力や生活技術の習得を支援します。
- 子どもたちの能力や希望を尊重した進路選択を支援します。
- すべての子どもたちが自分を大切にし、生きがいを実感できるよう支援します。
4 私たちは、家庭や地域の子育てを支援します。
| ■ 子どもたちの権利の保障 ■ |
1 子どもたちの権利擁護を基調にした処遇を行う。
- 体罰やプライバシーの侵害、その他の人権侵害に当たる行為を禁止する。
- 国籍、信条、社会的身分等による差別的な処遇を禁止する。
- 権利擁護に関する規則を施設管理規程等に明示する。
2 子どもの意見を尊重した生活の場を確保する。
- 子どもの意見や要望を反映した育成・支援計画を作成し実施する。
ア 子どもが意見や要望を表明し、それが聞き入れられ、あるいは検討される場を確保する。
| ■ 子どもたちの成長・発達の支援 ■ |
- 権利行使や責任・義務が一体のものであることを、普段の生活を通して学べる指導を行う。
ア 日常生活のリズムを大切にし、生活の場面に応じた対応能力を習得する教育を実施する。 イ 集団生活を通して規則を遵守することや、規律ある生活の大切さを学べるような指導を実施する。 ウ スポーツやレクリエーション活動を通じてルールやペナルティーの意義を理解できるように指導する。
4 基本的な生活習慣、礼儀作法、公共心の習得等を支援する。
- 基本的な生活習慣や礼儀作法を習得することの大切さを、日常生活を通じて身につけられるよう指導する。
ア 公共施設や物を大切にすることを、日常生活を通じて身につけられるよう指導する。 イ 自然環境を大切にする心や環境破壊についての知識や関心を深める取り組みを促進する。
5 生活の資質向上を図るための環境整備を行う。
- 衣・食・住における環境を整え、子どもたちの要望を適切充足させる配慮と工夫をする。
- 生活の資質を向上させるための計画立案と実施に関する検討機会を確立する。
- 子どもたちの健康の増進や栄養の改善を図る献立内容とする。
- 子どもたちの嗜好調査の実施検討を通じてその嗜好を取り入れ、変化を持たせた工夫をする。
- 食事や調理に伴う安全衛生や食品の衛生について、常に危険管理の意識を持って適切に行う。
- 食材の調達、検食、残食調査等、給食に関連する業務を適切に行う。
- 個々の子どもの健康について的確な状況把握を行い、早期発見、早期治療を適切に行う。
- 身体や衣服の清潔に努め、季節や環境に応じた対応ができるように指導を行う。
- 健康維持と病気予防の習慣を身につけるよう育成指導を行う。
- 自分の体と心の変化について関心を持ち、適切に対処できる指導を行う。
- 性に関わる差別や偏見をなくすための正しい情報の提供や指導の機会を整える。
- 教育機関や保健所等との連携を深め、協力体制の確立に努める。
- 性教育に関する職員の知識の増強や研修実施の促進に努める。
9 豊かな感性や創造性を育むための機会提供を積極的に行う。
- スポーツやレクリエーションの提供及び参加を積極的に行う。
- 文化的な催し物への参加、体験の機会を設けるよう具体的な計画立案し実施する。
| ■ 子どもたちの自立支援 ■ |
11 子どもたちの自立に向けて積極的な支援を行う。
| ア | 支援計画は子どもたちや保護者、関係機関等の意見を十分に尊重したものとする。 |
| イ | 高学齢児の自立(精神的、社会的、経済的)生活に必要な技術や知識習得のための支援を行う。 |
13 子どもたちの個性を育むための環境を整える。
14 子どもたちへの情報提供を積極的に行う。
15 退所した子どもへの支援計画を作成し、実施する。
| ■ 家庭や地域の子育て支援 ■ |
16 保護者と子どもたちへの支援を積極的に行う。
18 ボランティア活動の推進に積極的に取り組む。
19 子どもの福祉向上について地域社会と一体となって取り組む。
| ■ 子どもの福祉向上・推進 ■ |
20 入所に至るまでの情報交換を十分に行う。
| ア | 入所しようとする子どもと、その家族等に関する事前の情報を十分に把握する。 |
| イ | 子どもが在籍している学校等、関係機関の情報を十分に把握する。 |
| ウ | こどもセンターのケースワーカーとの事前の情報交換や入所後の処遇方針等についての確認を十分に行う。 |
21 子どもたちの持つ課題に対応できる専門性を確保・維持する。
| ■ 情報の公開・苦情解決 ■ |
22 情報の公開を積極的に行う。
23 苦情解決に関する対応を適切に行う。
| ア | 寄せられた苦情への回答は、概ね2週間に一度協議会より行う。 |
| イ | 苦情の内容が重篤なものへの対応については、協議会会長が規準推進委員会に諮問し、その助言・勧告を受けて迅速に回答する。 |
| ■ 養護、概念の説明 ■ |
この規準書の中で使用されている用語や概念について一部補足説明をします。
1 規準
一般的には「基準」という用語が使われるが、この文章は評価等の判断基準ではなく、私たちの仕事の内容や行動の実態を制約する規範であるために「規準」とした。
2 習得 (3条(1))
躾や支援といった大人から子どもへのかかわりのイメージよりも、子ども自らが生活を通して学び、身につけてほしいという思いから使用した。
3 自立支援計画 (11条(1))
一人一人の子どもの個性、家族構成、更には生育暦等に基づいて、また、子ども自身や保護者、子どもとのかかわりの深いこどもセンター、教育機関等の意見も参考にしつつ、各施設が全ての子どもについて作成する「その子独自の子育て方針」の骨子をまとめた計画書のこと。全国の児童養護施設において作成が義務付けられている。
4 知識の涵養 (14条(1))
様々な社会現象への理解や知識が自然に染みこむように徐々に養い育てる環境を整えるという意味で、涵養という用語を使用した。
5 家庭復帰 (16条(3))
児童養護施設で生活をしている子どもが、親・保護者とともに家庭生 活を再開できるように状況が整い、退所することを意味する。
6 こどもセンター (20条(1)ウ)
一般的には児童相談所と呼ばれているが、兵庫県では子育てに関する 保護者等の様々な悩みを気軽に相談できる行政機関として位置付ける目的で名称を「こどもセンター」としている。